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最高裁判所第一小法廷 平成2年(行ツ)176号 判決

愛知県半田市雁宿町二丁目六番地

上告人

後藤邑子

右訴訟代理人弁護士

三浦和人

愛知県半田市宮路町五〇番地の五

被上告人

半田税務署長 古澤恒男

右指定代理人

福永敏和

右当事者間の名古屋高等裁判所平成二年行コ第八号所得税更正請求に対する通知処分取消請求事件について、同裁判所が平成二年七月一八日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人三浦和人の上告理由について

所論は、原審において主張しなかった事由に基づいて原判決の違法をいうものにすぎない(本件記録によれば、上告代理人主張に係る平成二年六月六日付け準備書面は、原審において、本件和解が租税回避の目的でされたものではないことをいうための事情として陳述されたものであることが認められる。)。論旨は、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大内恒夫 裁判官 四ツ谷巖 裁判官 大堀誠一 裁判官 橋元四郎平)

(平成二年(行ツ)第一七六号 上告人 後藤邑子)

上告代理人三浦和人の上告理由

原判決(二審判決)は、左記事由により民事訴訟法第三九八条第一項六号に該当する。

一 上告人は、原審審理での平成二年六月六日付準備書面において、上告人と訴外末永らとの間の昭和五六年四月七日付売買(登記簿上は、四月二〇日付)は、無効であり、取消されていると主張した。右売買には、上告人の要素の錯誤があり、また右訴外人らの詐欺によるもので、無効であるが、無効の確認また取消の意思表示は、遅くとも昭和五九年一月一七日までに到達している。

従って、右売買契約は、確定的に無効であり、取消されているのであって、乙第二号証の昭和六〇年四月一六日の和解によって、初めて取消されたものではない。右解約の和解は、念のための確認に過ぎない。

原判決は、乙第二号証の和解によって、初めて契約解約した旨認定しているが、契約の当初よりの当然無効及び詐欺による取消には何ら判断していない。

二 右売買契約は、契約当初より要素の錯誤(民法第九五条)により無効であり、また売主側の詐欺(民法第九六条)によるものであって、昭和五六年一月一七日までに取消されているのであるから、所有権は当然に上告人に返っており、占有のみ前記訴外人にあった。

そこで、上告人は、昭和六〇年四月一六日の和解により、所有権を同日右訴外人に移したものであって、右行為によって、副次的に節税効果が発生したとしても、上告人が特に不利益な扱いを受ける理由はない。

所有権は、憲法上も財産権として保障され、何時どのように処分するか、所有者の自由である。

三 以上の次第で、原判決は、上告人の主張、立証した昭和五九年一月一七日以前に売買契約は無効または取消されており、所有権は昭和六〇年四月一六日以前に、既に上告人に戻っていた点について、全く理由を付せず、判断していない違法がある。

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